急速に血糖値が上昇することは、日常生活では望ましいことではなく、多くの危険をはらんでいます。
なぜなら血液中の糖分は、エネルギー源として必要な栄養素ですが、これが増えすぎるとさまざまな弊害をもたらします。
プロテイン・リンケージによる老化の進行は代表的なものですが、中性脂肪を増やし血管障害を促進する、ビタミンCの働きを阻害する、糖尿病になるなどのデメリットが指摘されています。
このため、血液中の糖分はできるだけゆっくりと上昇するような食べ方が、健康維持には必要です。
血糖値を急激に上げない食べ方とは?
最近では若者の食生活習慣も変化しました。
食事の前にデザートから食べる習慣もあるようですが、こうした食事では血液中の糖分が急激に上昇するため、体に多大なストレスをかけていることになります。
急激に血中の糖分が上昇すると、体はこれを下げるためにインスリンを大量に分泌します。
しかし、インスリンは老化を促進するホルモンなので、出る量をコントロールする必要があります。
コントロールするためには、食事を取る順番はとても重要な意味を持ちます。
まずは食物繊維、たんぱく質から食べ始め、それから炭水化物へと進んでください。
洋の東西を問わず、伝統的な食事の順番は、血糖値が緩やかに上がるような組立になっています。
洋食ならば、前菜、サラダ、メインディッシュ、デザート。
和食ならば、酢の物に始まり、煮物、焼き物、最後にご飯やそばが出て、甘味で締めくくりになります。
こうした食品の順番を守ると血液中の糖分はゆっくりと上昇するので、インスリンの上昇もあまり急激には起こりません。
その結果、食後に血糖値もゆっくりと下がっていきますので、食後の妙な空腹感も起きないわけです。
糖負荷指数の低い食品を摂る
さきほどは食べ物の順番に気をつけることで血糖値の急激な上昇を防ぐお話をしました。
ここではどのような食品が血糖値を急激に上昇させる食べ物であるかについて説明します。
その食品を食べた後の血糖値がどれだけ上昇するかは、糖負荷指数(グリセミックロード)とも呼ばれ、その食品に含まれる炭水化物の量と、その炭水化物がどの程度、ブドウ糖に変化するかを表した糖化指数(グリセミックインデックス:GI)から決まります。
たとえば、ポテト1個には約30グラムの炭水化物が含まれ、GI値は85と決まっています。
ですので、ポテト1個の糖負荷指数は 30×85÷100 で 26 とされています。
すなわち、炭水化物が多くGI値が高い食品ほど、急激に血糖値を上昇させる危険性があるのです。
このように炭水化物の量と質の掛け算で糖負荷指数は決定されますので、できるだけ糖負荷指数の低い食品を中心に食事の内容を組み立てることが望ましいわけです。
こうした食品はインスリンの上昇も抑制できますので、低インスリン・ダイエットとも呼ばれています。
次にあげる症状のある方には、是非オススメしたいものです。
- ダイエットしたい方
- 空腹時の血糖値が100以上ある方
(やや厳しい基準ですが、空腹時血糖値の高い方は糖尿病予備軍と言われています) - 糖尿病の方
(インスリンの働きが鈍くなっているため、血糖値が高い状態が続きやすく糖負荷指数の高い食品は避けるべき) - コレステロール値に問題があり、心臓病のリスクを指摘されている方
(インスリン濃度を下げ結果としてコレステロール値を低下させることができます) - ガンやガンの再発防止をする必要がある方
(がん細胞の唯一の栄養源はブドウ糖です。血糖値を低く保つことはがんの予防にもつながります)
糖負荷指数
食品 | 炭水化物含有量 (グラム) |
GI(グリセミックインデックス) | 糖負荷指数 |
---|---|---|---|
ベイクトポテト 1個 | 30 | 85 | 26 |
コーンフレーク 1カップ | 26 | 92 | 24 |
白米 150グラム | 36 | 64 | 23 |
全粒パスタ 1カップ | 48 | 44 | 21 |
白い食パン 2枚 | 28 | 70 | 20 |
玄米 150グラム | 33 | 55 | 18 |
グリーンピース 150グラム | 7.5 | 75 | 6 |
にんじん 0.5カップ | 8 | 47 | 4 |
ピーナッツ 乾燥ロースト1/4カップ |
7 | 14 | 1 |
血糖値を急激に上げない食べ方とは?
以前は、食物繊維は体の栄養にならないカスのようなものだと思われていました。
しかし今では、食物繊維が不足するとどうなるかは、おそらくご存知でしょう。
日本人は伝統的に肉をあまり食べず、野菜や豆、精製されない穀類など、食物繊維の多い食事を取ってきた民族です。
それらの消化吸収をつかさどる小腸は欧米人に比べて長い傾向があります。
しかし、近年では脂肪の多い欧米風の食事が多くなり、食物繊維を取る量が減ってしまいました。
その結果、便秘に悩んだりする人も多くなっています。
日本人が大腸がんで死亡する率が急速に高まっていますが、それも食物繊維の摂取量と大きな関係があるのではないかと言われています。
食物繊維は様々な働きをしてくれる食品です。
食物繊維はブドウ糖の吸収を遅らせるために、食後の急速な血糖の上昇を防ぎ、糖尿病の低血糖症によい影響を与えます。
食事をとり始めるときは、たんぱく質とともに食物繊維から食べ始めることを心がけてください。
また、酢と組み合わせてたいへん体に良いものです。
1日の食物繊維摂取量が30グラムの人は、15グラムの人に比べて、心臓発作に悩む率が3分の1という調査結果もあります。
動脈硬化や糖尿病を指摘された人は、心臓疾患の予防にもなるという食物繊維をもっとたくさん摂取する必要があります。
このほかにも食物繊維はなかなか噛み切れない咀嚼(そしゃく/噛むこと)回数を増やし、唾液(だえき)の分泌量を増やして満腹感を得やすくします。
唾液が豊富に分泌されるため、消化を助けることになります。
さらに小腸に分泌される膵液(すいえき)と胆汁(たんじゅう)の量を増やし、消化管の働きをよくしてくれるという効果があります。
また、十二指腸の粘膜を保護するため、潰瘍(かいよう)が少なくなるというおまけもあります。
便秘解消効果は言うまでもありません。
便を柔らかくし、量も増やしてくれるため腸を蠕動運動(ぜんどううんどう)が活発になります。
和食中心の食事をしていると人と、ファストフードなどを食べている人とでは便の総量も違うはず。
便の量を増やすことによって、発ガン性物質など腸内の有害物質の排出を促進することができます。
腸内のビフィズス菌などの善玉菌の働きを助けるので、腸内環境をよくすることにもつながります。
食物繊維を出来るだけ食べていると、肌も美しくなります。
有害物質が排出されるのですから、肌にいい理由もお分かりいただけるでしょう。
食物繊維は穀物や野菜、豆類、海藻、果実、きのこなどに多く含まれています。
食物繊維の生理作用は種類によって違うので、「きのこに食物繊維が多いからそれだけ食べる」というのではなく、いろいろな種類の食品を取り入れることが大切です。