ホルモンについて正しい知識を持つことは、アンチエイジングにおいて極めて重要と言えます。
なぜならば、ホルモンの分泌量の変化が老化の速度を左右する重要な要因だからです。
需要なホルモンについて理解しておきましょう。
もくじ
老化を進めるホルモン1:コルチゾール
コルチゾールは、副腎皮質(ふくじんひしつ)から分泌されるステロイド・ホルモンの一種で、別名ストレス・ホルモンとも呼ばれます。
その名の通り、ストレスが加わると大量に分泌されて、身体を外界からの刺激に反応できるように、緊張状態に維持します。
このホルモンは、その昔、人間が原始人であったころから、生命を維持するためになくてはならなホルモンでした。
たとえば人間が突然外敵に襲われたとします。
この外敵と戦うにしても、また外敵から逃げるにしてもこのコルチゾールが大量に分泌されます。
現代人の生活に置き換えると、仕事で一番頑張らなくてはいけない時に分泌されるホルモンであり、精神的ショックで身体が緊張状態になった時も分泌されているホルモンです。
コルチゾールは、筋肉やグリコーゲンを分解して糖分を作り出して、緊急時のエネルギーを血中に確保します。
しかし、このホルモンが常時分泌されていると、筋肉がやせてしまう、骨がもろくなる、体内にナトリウムが溜まり、血圧が上昇するなどの弊害も生まれます。
「燃え尽き症候群」という言葉がありますが、これは過剰なストレスが持続すると、コルチゾールによる弊害が蓄積してしまった状態です。
さらにひどくなると、コルチゾールを分泌する副腎皮質の機能が衰えて、コルチゾールの分泌低下を招きます。
猛烈社員が一つのプロジェクトのために浸食を忘れて働いた後、風邪をひいて寝込んでしまうという話はよく聞きますが、これなどはストレス・ホルモンの分泌過剰で、身体の免疫力が低下してしまうために起きる現象と言えます。
また、コルチゾールの過剰分泌は、若さを保つホルモンであるDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)や性ホルモンの分泌を抑制してしまいます。
過剰なストレスにさらされると、男女問わず、若さを保つ性ホルモンの働きが低下します。
コルチゾールは人間が生きていく上ではなくてはならない大切なホルモンですが、このように身体にとっては老化現象に繋がるホルモンであると言えます。
ストレス・ホルモンとは?
ストレスによって分泌されるホルモン。
視床下部(ししょうかぶ)から分泌される副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)などがある。
老化を進めるホルモン2:インスリン
インスリンには、糖分を細胞内に押し込んで脂肪を作るという大切な働きがあります。
血糖値が下がるのはこうしたインスリンの働きの結果ともいえます。
しかし、血糖値が高い状態が続くと、常にインスリンが分泌されることになり、脂肪の過剰蓄積が起こります。
その結果、インスリンの働きが低下して、動脈硬化や糖尿病の原因にもなります。
さらに、さきほどのコルチゾールの分泌が進み、さらに血糖値が上昇するという悪循環が始まります。
だからこそ、インスリンは老化を進めるホルモンと言われるわけです。
デザート菓子のように血糖値を急激に上昇させる食べ物は、ダイエットの大敵であるだけでなく、若さにとっても大敵という事です。
米国のアンチエイジング医療の基準では空腹時のインスリン値が10(μU/ml)以下であることが望ましいと言われています。
空腹時のインスリンを低値に保つためには、後ほど紹介する血糖値を急激に上げない食品、俗にいう低インスリン・ダイエット食品を摂るように心がけること、間食を避けること、ビールなどのアルコール飲料は控えること、過度な運動を生活習慣に取り入れることがすすめられています。
若さを保つホルモン1:DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)
DHEAは、コレステロールを原料として、副腎皮質で作られるホルモンです。
広い意味のアンドロゲン(男性ホルモン)の一種ですが、最近の研究で若返りのための必須ホルモンとまで言われ、注目されています。
DHEAの血中レベルは25歳ごろまでがピークで40代で約半分に減少、80代ではピークの5パーセント程度まで下がってしまいます。
ところが、疫学調査で健康長寿の人を調べたところ、高齢者でも血液中のDHEAレベルがかなり維持されていたことがわかりました。
こうしたことからDHEAレベルを維持することが健康長寿につながるという仮説のもと、研究が進んでいます。
最近では唾液中のコルチゾールとDHEAレベルを調べ、ふたつのホルモンバランスからストレスレベルを判定するという方法もあります。
また血液中のDHEAレベルとしてDHEA-Sという指標を調べ、必要ならばDHEAをサプリメントとして補給することがすすめられています。
若さを保つホルモン2:HGH(成長ホルモン)
成長ホルモンは、若さを保つために必要不可欠なホルモンともいわれていますが、思春期をピークに年齢とともに分泌が低下します。
その名の通り、細胞の成長を助けるホルモンであり、小児期の発育には欠かせないものと考えられています。
また、アンチエイジングの歴史は、このホルモンの研究から始まったといっても過言ではありません。
1990年にルドマン医師が成長ホルモンを60歳以上の健常者に注射したところ、
- 体脂肪の低下
- 筋肉量の増加
- 血中コレステロールの低下
がみられたというものです。
しかし、こうした積極的な治療を始める前には、必ず専門医のアドバイスに従うべきであり、安易な補充療法は危険なこともあるといえます。
最近では、より自然な方法で成長ホルモンの分泌を維持する方法が研究されています。
成長ホルモンは、夜間、睡眠中に一日の分泌量のほとんどが集中しますので、質の良い睡眠が成長ホルモンの維持には欠かせない条件です。
昔から「寝る子は育つ」と言いますが、これからは「よく寝る成人は若返る」といったところでしょうか。
また、就寝前に甘い物など炭水化物を多く摂ると、成長ホルモンの分泌を抑制してしまうことも分かってきました。
大量のアルコールも成長ホルモンの分泌を抑えますので、ご用心ください。
若さを保つホルモン3:メラトニン
メラトニンは松果体(しょうかたい)という脳の中心にある分泌機関で作られるホルモンです。
その働きは長く不明でしたが、近年の研究で催眠誘導作用や抗酸化作用などの働きがあることがわかってきました。
メラトニンの分泌のピークは7歳ごろにありますが、45歳を過ぎると松果体の萎縮がはじまり、60代では20代の頃の半分量のメラトニンしか分泌されなくなる、と言われています。
50歳を過ぎたころから、朝早く起きてしまったりする睡眠障害が始まるのは、メラトニンの分泌低下が原因のようです。
睡眠は成長ホルモン分泌には欠かせないものですので、メラトニンの減少は成長ホルモンの低下につながり、老化現象を進めると言われています。
インドの伝承医学であるアーユルベーダでは、松果体のことを最も大切なホルモン分泌器官として説明してます。
さらに、松果体の働きが衰えると、他のホルモン分泌器官にも影響があると言われています。
最近の研究でも、メラトニンの減少により生殖器官の機能低下が起きたことが報告されています。
一方、メラトニンには抗酸化作用があることが報告されており、ガンの予防などの効果も期待されています。
睡眠障害がある方は専門医のアドバイスに従い、メラトニンを服用されることをおすすめします。